行列のできるわけ
私の同級生の中には自慢できるヤツばかりいる。
日本一の声優になった男もいれば、日本一の整体師になった女もいる
その中には、日本一のラーメン屋の女将になった女もいてね
占いをやってると色んなことを考えさせられるものでね
何を思ったのか、そこのラーメン屋で働きたいと思ったことがある
自分の作ったものを、目の前でお客さんが美味そうに食べてくれる
最高の仕事やんって、ちょっと軽く考えていた部分があるんだろう
就職活動なんかまともにやったことのない私だから、リクルートスーツもなく
適当なヨレヨレのシャツで面接を受けたのだが、大将は快く受け入れてくれた
というか、どこのなく見抜かれていたんだろう。色々とね。
いくつか店舗をもつそのお店のなかでも、繁盛店で常に行列の絶えない店舗に配属された
その時に大将から一言・・・
「お客としての目線と店員としての目線は全然違う。店員として店や内部を見るときっと幻滅するよ」
私はこのお店のラーメンがめっさ好きだ!!
日本で一番美味いと断言できるほどお気に入りのお店だ
大将からそれを言われた時「そうなのかもなぁ・・・」と心の中で思った
以前、自動車メーカーで働いていた経験があるからね
外見の良さと内面の汚さは知っていたからね
最初はあまり混雑しない平日夜に入ってみる
これでも喋る仕事をしているから喉には自信があったかが
半日終わる頃には「いらっしゃいませ」の声が出なくなっていた。
洗い物をさせてもらった
食洗器があるので、軽く手洗いをして、あとは食洗器にぶち込めばキレイになって出てくる。
はっきり言って大したことのない仕事だが、全くもって追いついていない
洗い場はすぐにパンパン!! 手はボロボロで洗剤が沁みる
気づけば汗だくで腰も動かない
二日目も平日の夜に入って、その日の終わりに大将に泣きを入れた
私のラーメン屋生活は、二日で終わった。それも半日を二日だアハハw
でも、その中で知った。
洗い物以外にも、接客や声の掛け方、テーブルの調味料の配置、タオルの折り方や置き方、清掃の仕方
そこには全て異常なまでのこだわりが詰まっていた
「そんなところ絶対にお客さんは見てないよ」「気にしてないよ」って言えるところまで徹底されていた
もちろん新人なのでスープだ麺だというラーメン自体には触れていないが
接客にそこまでこだわるお店だ、ラーメン自体もそれ相当のこだわりが詰まっていて、隠れているんだろう
それがラーメンの味にもお店全体にも反映され、お客さんはこの店に足しげく通うのだろう
それでいて、大将のあの言葉を思い出したらゾッとした
私は店員としてお店の内部を見せてもらい経験し、その内容に幻滅するどころか感服した
でも、大将の中での完璧はまだまだ先にあるんだ
だからあの言葉が出てくるんだ
ラーメン屋と占い、全くもって畑違い
でも、お客様を笑顔にするという意味では同じかもしれない
とても、学ぶべきことが多かった二日間だった
大将には感謝してもしきれないと今でも・・・
いや一生忘れないだろう